初めまして。今回、第七回を担当させて頂く一年の垣野です。

一年生の私は、まだあまりこういった文章を書いたことが無いので、温かい目で見て頂けると非常にありがたいです。ちなみに、既にこの行を書くまでにかなりの時間を要していたりします。

さて、現在大学は夏休みで、現に私も実家に帰省しています。その有り余る時間を用いて、何とかこちらのブログも良い物を仕上げられたらな、と思っているところです。

 

では、本題に移りましょう。今回私が紹介するのは、神林長平の『ライトジーンの遺産』です。

私はSF小説が好きで、特に神林長平が好きなのですが、本作はそんな神林作品、SF作品への入門に最適な一冊。

神林長平という作家は、言語についてのSFを書き綴ってきた作家であり、本作もその一つです。本作は、サイファと呼ばれる超能力者を主人公としたハードボイルドSF。今は亡き巨大企業、ライトジーン社が創りだした二人の最強のサイファ「菊月 虹(キクヅキ コウ)」と彼の兄「MJ」。その出生に隠された謎を描いた作品。

小難しいSF小説は苦手だという方も、超能力ものとして、あるいはハードボイルド小説として楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

それでは、前回から引き継いだものも合わせて、三つのキーワードを紹介しましょう。

 

①心を揺さぶられる寂しさ

 

前回より引き継いだキーワードがこちらです。

本作、『ライトジーンの遺産』は、前述通り超能力者「菊月虹」の活躍を描いたSF作品です。よく「超能力もの」というと、それらの能力が故に迫害されることが多いですが、本作もその一つ。

主人公の菊月虹は、社会保障番号も何も持たない「自由人」という身分。一般人たちが、同じ人間としては扱ってくれない身分です。最強のサイファという存在でありながらも、自由人として生きているコウの姿は、どこか孤独を感じさせます。

そして、コウとMJ、二人の人造人間が生み出された理由は、臓器崩壊を起こさない人間のモデルを作り出すことにありました。というのも、この作品の世界では、人間の臓器はある日突然崩壊してしまうのです。その為、人間は人工の臓器を必要とします。しかし、一方で彼ら人造人間は、臓器崩壊を起こしません。それは彼らが「限りなく人間に近い、別の生き物」であるからです。そんな「人間ではない」という意識もまた、彼らサイファの孤独さを感じさせます。

 

 

②ハードボイルド

 

本作は、やはりこの一言に尽きます。

主人公である菊月虹は、ウィスキーと本を愛する自由人です。警察と協力して臓器犯罪を捜査をしつつ、スキットル片手にフラフラと仕事をして生活している。好きな詩集を読み耽りながら、生のウィスキーを楽しむ、いわゆるオッサン主人公。

そんな渋い主人公に反して、まわりを取り囲む登場人物といえば、相棒は新米刑事。兄のMJは企業と繋がっていき、更に能力によって性転換をして、若さまで保っている。その一方、コウはその日暮らしの生活。格好も完全に酒飲みのオッサンです。

取り敢えずウィスキーがあればいい、というような男。そんな彼のハードボイルドな生き様に、孤独さだけでなく、格好良さを感じてしまう。

 

 

③続きが読みたくなる物語

 

正直なところ、『ライトジーンの遺産』は入門書というには少々長い。文庫本でも600ページを超える連作集です。しかし、やはりそれを感じさせない面白さを持った作品なのです。

本作は七つの物語で構成されています。『アルカの腕』、『バトルウッドの心臓』、『セシルの目』、『ダーマキスの皮膚』、『エグザントスの骨』、『ヤーンの声』、そして『ザインの卵』。これらはどれも人工臓器のことを表しています。○○社製の人工臓器ということです。各章は、それぞれ腕や心臓、皮膚というようにサブタイトルに合った人工臓器にまつわる話となっています。各臓器に関する事件が起き、それを飲んだくれの超能力者が解決していく。更にその背後で、ライトジーン社にまつわる大きな陰謀が動いている……。サイファの秘密を探る物語に、引きこまれていくことでしょう。

 

 

さて、いかがでしょうか。サイバーパンクな、ハードボイルドなSFが読みたい方には是非ともオススメしたい作品です。また、ちょうど神林長平の代表作『戦闘妖精・雪風』が映画化するなんて話もあり、神林作品への注目度が上がっている(と思いたい)ということで、入門書としてもピッタリの作品です。

それでは、次の方にバトンを。