なんとなく、秋になって、ふと寂しい、悲しいと感じるようなときがたびたびあります。

なにが私にそう感じさせるのでしょうか、突き刺さるように冷たい風か、赤橙に染まった夕焼け空か。
それとも、その空を背景にした真っ黒なコンクリートジャングルか。あるいはそのすべてでしょうか。

そしてふと、思い出すのは、黄金色の稲穂にうめつくされた私の故郷。
なんとも懐かしい風景が、私の目蓋に映しだされます。

そんな感傷にひたる時の節に今回のリレーブログが回ってまいりました。

こんにちは、または、こんばんは。

十月前半、十一回目の担当となりました、優木です。

今回私がお薦めする本は『ななつのこ』。
加納朋子さんによって創られ、1999年に東京創元社さんから創元推理文庫レーベルで発刊されました。

それではあらすじをどうぞ。

●あらすじ

主人公、十九歳の入江駒子はちょっとドジで、読書が趣味の普通の短大生。

書店の新刊本コーナーで見つけた『ななつのこ』という短篇集の、田園風景が描かれた表紙絵に不思議と懐かしさを感じる。

本に一目惚れした駒子は著者の佐伯綾乃へファンレターを書こうと思い至り、なんとなく身近で起きた〈スイカジュース事件〉を綴ったところ、なんと作家本人から返事が。

しかも、例の事件に客観的な光を当てて、まるでそれが真実であるかのような実像を浮かび上がらせる内容だった―――。

こうして始まった手紙の往復が、駒子の日常に新たな彩りを添えていく。

【1】発見の楽しみ

前回のブログから引き継いだキーワードです。

本書はミステリですので、やはりこのキーワードは欠かせないかと……。ピッタリです。

『ななつのこ』は、ミステリからさらにジャンルを細分化すると、日本推理小説上における〈日常の謎〉という枠組みに入ります。
海外推理小説としてなら〈コージー・ミステリ〉にあたる代物で、定義としては「探偵役が警察官や私立探偵ではなく一般人」で「殺人などの暴力表現を極力排除している」ことが挙げられます。

あらすじの〈スイカジュース事件〉など、タイトルからしてコメディ感が拭えませんが、思いもよらないような結末が私達に与えられることもあります。極めて残酷な結末であっても。

そういった発見が、本書を読む上でも至上の楽しみといえるでしょう。

【2】ノスタルジア

『ななつのこ』は、ノスタルジアという概念を背景に物語が進んでいきます。
ノスタルジアとは、故郷を懐かしむこと、過去を懐かしむことなどの意味があり、駒子も『ななつのこ』を一目見て「(……懐かしい)」と感じています。

そして、駒子は日常に起きた出来事から「そういえば、これに似た話があったな」と『ななつのこ』から物語を思い出し、連想します。

時には駒子自身の過去を追憶することもあり、推理小説に純文学的、観念的な文章が組み合わさって奥行きのあるストーリーに仕上がっています。

【3】青春

前述しましたが、駒子は十九歳の短大生。
まさに青春真っ只中の女の子です。

ちょっとお洒落をして学校に行ってみたり、友達との他愛もない会話に花を咲かせたり、バスで隣の席に座った男性が気になったり……。

『ななつのこ』は、まるで作者自身が大学生なのかな? とでも言うくらいに駒子の大学生活をリアルに綴っています。

学生さんや、社会人の方に読んでもらえば、大学生あるあるに思わず吹き出してしまうでしょう。

くどいようですが、こういったところでも懐かしさを感じられるかもしれませんね。

                                               

余談ですが、加納さんが影響を受けた人物に北村薫さんという推理作家がいます。
彼の作品には『空飛ぶ馬』を始めとした〈円紫さんシリーズ〉というものがあり、日常の謎をテーマにし、女子大生が主人公として登場します。
実は加納さんのデビュー作『ななつのこ』は敬愛する北村薫さんへ送った作品として知られ、随所に影響が見られます。
そちらもお薦めなので、ぜひ読み比べてみてください。

以上で『ななつのこ』紹介を閉じたいと思います。

……書いているうちにたくさん話しが枝分かれしてしまいましたが、いかがだったでしょうか?
散々駄文になってしまいましたが、この紹介文から読んでみたいと思っていただけたなら、幸いです。

それでは次回の紹介者さん、よろしくお願いします。