FSMのどのカテゴリーにも属さない本を読むことが多く、毎回どの本を紹介すればよいか毎度悩む。そこで例年、直近読んだ中からキーワードに近いものをこじつけ気味に選ぶのであるが、今回は直近のものがぴったりであったため、すぐさま採用した。二つ前の芥川を見て、自分も純文学のような作品を紹介したい、と感化されたのは内緒だ。

 純文学を他の作品から区別する上で、「大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説」(Wikipediaより)かという指標があり、その点から見ると、終始フェチズムを全面に押し出した本作は、後期の作風とは異なり、娯楽性が強いようにも読み取れる。しかし、時代背景のよく表れた文字遣いや、素描のような文体にも関わらず、現前したかのように移りゆく心情の変化は、芸術という他に形容し難い。著名な作品であるため、あらすじは敢えてここには記さない。未読の方は、以下のキーワードから汲み取っていただければと思う。

・成長物語
 前回より引き継いだキーワード。本作は、主人公の会社員がカフエエで目をつけた十五才の少女を自分好みに育てようと試みるも、甘やかすうちに肥大してゆく彼女のエゴを持て余し、次第に手に負えなくなっていく話である。ヒロインのナヲミが成長する様が描かれているが、その様変わりぶりたるや、もはや変貌といえるかもしれない……。

・地元
 この本を読むきっかけは友人からの紹介だったが、奇しくも物語の舞台となる大井町や大森は、私の実家のある地域であった。小説を読む中で自分の見知った場所が唐突に出ると、ドキリとすると共に、どことなく親近感を覚えてしまうという経験はないであろうか。都心近郊に出向く機会が多いため、そういった経験が人より多いのかもしれないが、きっと一度はあのこそばゆさを味わったことがあるのではないか。

・フェチズム
 この作品において最も印象に残るであろう、特徴的な部分がここだ。肢体や香気から五感をくすぐる描写がふんだんに盛り込まれている点も特筆すべきであるが、とりわけ頻繁に表現されているのが足についてだ。これは逐一挙げればきりがないが、気になった方は是非手にとって一読いただきたい。