まず更新が大変遅くなってしまったことをお詫びしなければなりません。大変ご迷惑をおかけてしました。言い訳ですが、少し体調を崩しておりまして…気候が安定してませんので体調には気をつけなければなりませんね。さて、お初にお目にかかります。今年度より当サークルに所属させていただくことになりました南波と申します。とは言っても新入生ではないのでオールド・ルーキーですね。
こういうものを書かせていただくのは初めてな上、昔から文章を書くのは苦手でありますが広い心で眺めていただければ幸いです。

私が紹介させていただくのは芥川龍之介の蜜柑です。教科書に載っていたこともあるそうで、芥川の代表作品の1つである短編小説になります。
芥川龍之介は知らぬ人はいない日本を代表する小説家です。1914年に「老年」を発表しデビュー。その後は「羅生門」や「蜘蛛の糸」,「藪の中」などの代表作を生み出します。著書は短編小説が殆どを占めます。長編も挑戦したことはあるそうですが完成には至らなかったようです。そして1927年に自殺。35年の人生でした。
今では殆どの著作が青空文庫で読むことが可能で、私も今回扱う「蜜柑」は青空文庫で拝読させていただきました。

あらすじ
ある曇った冬の日暮れのこと。二等客車の隅に腰を下していた私は披露と倦怠を抱えて発車を待っていた。やがて発車の笛がなると私の乗る二等客車に13,4歳の田舎者らしい小娘が入ってきた。私は小娘の顔や不可解な行動に不快感を持っていたのだが、その後の出来事に私は彼女の行動の一切を了解し、その光景を心に焼き付けることになるのだった。

1.カラフルな発想
前回からの引き継ぎワードです。カラフルと聞いた時に真っ先に私の中に浮かんできた作品がこの「蜜柑」でした。ただし、ここで扱うカラフルというのは前回の意味合いとは少し違って色彩的な意味合いになります。というのもこの作品には「煤を溶かしたようなどす黒い空気」「一旒の白い旗」「気持ちの悪いほど赤く火照らせた」など色彩を表現する部分が多く見られます。まるで主人公の心情と呼応しているかのように小気味悪い色合いですが、だからこそ最後の大切なシーンで「鮮やかな蜜柑の色」が強調されて、私達の心に強く焼き付いてくるのだと思います。

2.少女
物語において少女は様々な印象を読者に与えます。神秘的,不思議,不気味,儚さ…。私は少女にフォーカスした作品が好きなのですが、この「蜜柑」でも少女が全体を通して大きな役割を担っています。作中では「油気のない髪をひっつめの銀杏返しに結って、横なでの痕あとのある皸だらけの両頬を気持の悪い程赤く火照らせた、如何いかにも田舎者らしい娘だった」とされていますので、どちらかといえば不気味な雰囲気も感じると思いますが、それでも最後まで読めば儚さのようなものも深く感じることが出来ると思います。そして私達も少女を別人のように意識してしまうのです。

3.風景描写
2つのワードのまとめのようになってしまいますが、この作品は描写がとても鮮やかで直接的に登場人物と繋がってきます。「夕刊の紙面に落ちていた外光が、突然電燈の光に変って、刷すりの悪い何欄かの活字が意外な位鮮やかに私の眼の前へ浮んで来た」「 隧道へはいった一瞬間、汽車の走っている方向が逆になったような錯覚」など、月並みな表現になってしまいますが、特に恰好良い。もちろん恰好良いだけではなく人間の感覚的な表現になっていますので、とても想起しやすく感じ取りやすいです。また、最後のシーンは少女を含めて奇麗な1枚になっております。「鮮やかな蜜柑の色」と「小娘」が色彩豊かに心の上に焼き付かれます。そしてその光景を感じ取れたならば、主人校と同じく喧騒極まりない現実を束の間だけ忘れることができるのではないでしょうか。

3ワードは以上になります。私個人的な読み方になりますが、この「蜜柑」はストーリーよりも雰囲気を感覚的に楽しめる作品でした。夕刊の紙面の内容などから当時の時代感を汲み取ることが出来ますが現代人においても主人公と似た感覚は持っていると思います。「云いようのない疲労と倦怠とを、そうして又不可解な、下等な、退屈な人生」などの部分などは鬱的な現代の若者にはしっくりくるのではないでしょうか。なので主人公と自分をどうにか上手く重ねて読んでみれば、より強く雰囲気を感じることが出来ます。是非読んでみてください。
ちなみに私の個人的なお気に入りは主人公が煙草に火をつける場面です。恰好良い。

芥川龍之介の経歴の参考はwikipediaより、あらすじの参考と本文の引用は青空文庫「蜜柑」より行っております。