暑さも少し和らいできたように感じる今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。
 当の私は、8月後半の担当だったにも関わらずまったくブログの更新をしなかったことに対する罪悪感に苛まれております。会員の方々には沖縄のお土産を差し上げるという形でお詫びをしたいと思います。ちなみに早い者勝ちです。あ、中身はちんすこうです。紅芋タルトなるものを期待していた方、すみません。
 私事はこれぐらいにしまして、さっそく本文に参りましょう。
 今回の更新は弌がお送りします。新参者なりに頑張って更新しますよ。

 さてさて、今回ご紹介させていただくのは『新世界より』という作品です。念動力の存在する1000年後の日本が舞台の小説です。著者は貴志祐介で、この方は他にも『鍵のかかった部屋』というミステリー作品も手掛けています。

0.あらすじ
 1000年語の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲をしめ縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子供たちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。

1.【平和な世界の裏側】
 この作品の舞台である神栖66町はとても平和な場所、ということになっています。しかし、その平和はどうやって維持されているものなのか。町で暮らす子供たちは、その真実を知りません。自分たちがどのようにして管理されているのか。念動力とは何なのか。外の世界には何があるのか。都合のいいようにコントロールされているから、自らが置かれている環境の異常性を疑問にすら思わない。
 作り上げられた平和な社会の裏には、対を為すように巨大な闇が潜んでいます。
 私たちの社会だって、全ての情報が公開されているわけではありません。権力者にとって都合の悪いことは伏せられる。社会が抱える深い闇の存在に、私たちが気づくことはない。
 けれど、そのほうが私たちにとっては幸せなのかもしれません。大きな闇の存在に気がついてしまったら、もう今まで通りの暮らしはできないでしょうから。この作品に登場する少年少女たちと同じように……

2.【いけないことは蜜の味】
 上にも記載したように、この作品は多くの謎を秘めたまま物語が進行していきます。それは1000年間の人類史であったり、今の社会の成り立ちであったりと様々です。自分の知らないことがあったら知りたくなってしまうのが人というもの。特に好奇心旺盛な子供ともなれば、それは猶更のことでしょう。
 情報統制された社会において、真実を知るという行いは禁忌に等しいことです。
 しかし、これ以上はいけない、今ならまだ引き返せる、そう思っていても『秘密』という2文字の甘美な響きには抗えない。一度秘密の一端を知ってしまえば、全てを知るまで満足できるはすがありませんから。
 人間が、禁忌とされている知識の果実を食べてしまう、というのはどこかで聞いたことのあるような展開でもありますね。悪魔の囁きに耳を貸し、神様に背いて知識の果実を食べてしまった人間の末路はもうご存知のはずです。悪いことをしたら罰が当たるように、登場人物たちも真実を知った報いを受けることになってしまいます。
 彼らを待ち受ける壮大な物語は、罰を受けた人間に用意された試練の旅路なのかもしれません。

3、【SF? それともファンタジー?】
 『新世界より』は、現代から1000年先の日本が舞台になっています。科学文明がなりを潜め、生態系の変わり果ててしまった日本はもはや異世界。1000年後の日本は、バケネズミやミノシロ、ネンジュヘビといった見たことも聞いたこともないような生物でいっぱいです。特に独自の社会体系と言語を持つ哺乳類とされるバケネズミは、毛のないデバネズミ――現実味の増したねずみ男のような外見という見た目の不気味さも相まってとてもファンタジーらしい存在となっています。
 その一方で、作中に登場する単語の多くには、SF的要素が盛り込まれています。サイコキネシスや、生物に擬態した移動図書館、とあるコロニーが作り出したミュータントなど、摩訶不思議の一言では片付けられない科学的な世界観が、1000年先の日本にはあるのです。

 そんな世界観に興味を持った方、禁忌を犯した登場人物の行く末が気になった方、どうぞ一度この本を手に取ってみて下さい。表紙を開けばすぐに、あなたも新しい世界へと誘われることでしょう。

 ここまでだらだらとあまり中身のない文章を書いてしまった気がしますが、その反省をすると共に、後続に控えている他の1年生会員の方々が私の分まで頑張ってくれることに期待しつつ、この辺りで本の紹介を終わりとさせていただきます。
 季節の変わり目は体調を崩しやすいですから、どうぞ健康管理にはお気を付けください。
 ではでは、またの機会に。