今年度より、SF研の会長となりました、垣野と申します。新歓読書会も無事終了し、新たな気持ちでこちらのリレーブログも進めて行きたいと考えております。
さて、昨年度より開始しましたリレーブログ企画、キーワードを引き継ぎながら会員がおすすめの本を紹介していくというもの。本年度は、さらに新たな縛りを加えて進めていきたいと考えています。して、新たな縛りと言いますと、
”前任者が引き継いだキーワードを引き継いではならない”
というものです。
すなわち、引き継げるキーワードは二つに一つということになります。私以降、どのようなリレーが続いていくのか……。乞うご期待ください。

 

さて、そのような新体制で始まった今年度のリレーブログ企画。その第一弾を飾るのは、月村了衛の『機龍警察』である。
本作は、早川書房より出版されている”至近未来”を描いた警察小説シリーズ。そして、機甲兵装と呼ばれるみんな大好き人型ロボットが活躍する娯楽作品だ。
舞台は、そう遠くない未来――至近未来の日本。大量破壊兵器の衰退に伴い、CQBに特化した近接戦闘兵器体系・機甲兵装が台頭した世界。
しかし機甲兵装の普及は、同時にそれによる犯罪を引き起こした。狛江事件と呼ばれる機甲兵装の用いられた殺人事件を機に、警視庁は、警察のセクショナリズムを越えた新たな部署、特捜部を設立した。
そんな特捜部に与えられたのは、三機の最新型機甲兵装、龍機兵(ドラグーン)。そして、その搭乗要員である三人の傭兵たち……。
特捜部に立ちはだかる、謎の〈敵〉。日本を舞台に巻き起こる、テロリズム。ロボットバトル。手に汗握るエンターテイメント作品である。
と、このようなあらすじを聞けば、あの台詞を思い出すだろう。

「機甲兵装」それは軍事用に開発された近接戦闘兵器体系の総称である。軍事分野に広く普及したが、機甲兵装による犯罪も急増。警視庁は、特捜部を新設してこれに対抗した。通称、機龍警察の誕生である。

警察×ロボットと言えば、やはりパトレイバーであろう。ちょっとやってみたかったのだ。このナレーション。
さて。それではそんな本作を、以下の三つのキーワードで紹介していきたいと思う。
1、影が動く
前回より引き継いだキーワードがこれだ。
本作を、単純な警察小説。あるいはロボットSFだけではなく、「警察小説であり、ロボットSF小説」たらしめているのは、まさしく暗躍する「影」の存在である。
機龍警察シリーズでは、一作ごとに姿、ライザ、ユーリ。また特捜部の刑事たちの過去にクローズアップし、物語が進んでいく。しかし、シリーズ通して変わらないのは、〈敵〉の存在である。
あらゆるテロ組織、マフィア、傭兵、警察……と、組織の裏に暗躍する謎の存在。シリーズは、キャラクターの物語だけでなく、そんな影を追う物語でもある。
事件の裏に潜む〈敵〉の存在。それを追う物語に、引き込まれること違いないだろう。

2、過去と現在。
前述の通り、本シリーズは登場人物の過去を掘り下げつつ、様々な事件に立ち向かっていく。その上で欠かせないのは、やはり登場人物の過去。そして現在だ。
主要登場人物であり、最も異色な存在である三人の傭兵。その経歴だけでも、彼らのキャラクター性の強さが窺い知れる。
様々な戦場を生き延びてきたプロの傭兵にして、自他ともに認めるコーヒー狂。姿俊之。
元モスクワ民警所属の刑事にして、アジアの裏社会に精通する指名手配犯。ユーリ・オズノフ。
元IRF(アイルランド自由軍)所属のテロリスト、ライザ・ラードナー。
また、特捜部所属の他の人物も、様々な過去と今を持っている。テロにより家族を亡くした技術班主任。外務省から警視庁という異色の経歴を持つ特捜部長。荒れた学生時代を過ごした熱血刑事、などなど……。
様々な「過去」と「現在」とが交錯する物語は、ミステリとSF要素に更なる重厚感を与えている。

3、”分かっている”演出
お待たせしました。ロボットでございます。
警視庁特捜部に与えられた三機の機甲兵装、「フィアボルグ」、「バーゲスト」、「バンシー」。その三機の格好良さたるや、もう言葉では語り尽くせない。いや、小説なのだが。取り敢えず、是非とも本作を読んで、その格好良さに痺れて貰いたい。
しかし、敢えて恐れながらも此処に書かせて頂くのなら、龍機兵の格好良さは、やはり機体に備えられた機構(ギミック)にある。そして、それを操る搭乗要員三人の戦闘スタイルにも現れているだろう。
龍機兵にのみ備えられたシステム。それこそが、アグリメント・モード、DRAG-ON。ブレイン・マシン・インターフェイスにより、龍機兵と搭乗者を完全に同調させる機能だ。
脳波コントロール機といえば、多くのロボットアニメで見たことがあるという方もいるだろう。しかし、何にしてもこれは、システムの使い方がうまい。なんとも”分かっている”演出なのだ。
他にもライザが駆るバンシーの装備換装や、姿が駆るフィアボルグのダガーによる近接格闘戦。などなど、堪らない展開が目白押しである。
そういえば、月村氏は脚本畑の出身である。そのようなことも、男を熱く滾らせてくれる演出の一因なのかもしれない。

警察・ミステリ小説が読みたいという方にも。ハードなリアルロボット物が読みたいという方にもおすすめ出来る一冊だ。是非とも、熱く滾るリアルロボット物が読みたいという方にはおすすめしたい。攻殻機動隊やパトレイバーが好きなあなたは、きっと気に入るはずだ。