まずは謝罪から、12月後半担当だったのですがかなり遅れてしまい申し訳ありません。
言い訳をさせていただくと今回の本がハードSFでちょっとバリカタ過ぎまして…
読むのが辛かったというか、なんというか・・・面白かったんですけどね!
さて、初めまして新入生の大野と申します。サークルには7月から所属しましたので顔を合わせていない方もいるかと思います。以後お見知りおきを…

今回紹介させて頂く本はピーター・ワッツの『ブラインドサイト』です。
第45回星雲賞の海外長編部門を受賞。作者は博士号を取得した海洋生物学者にしてSF作家。学者だからなのか理論づけられた文章は、興味深くも難解。メインテーマは「意識」、人の意識とは何か、それが何のために存在し、どのように働くのかについて、500ページもの物語で迫っていく。伊藤計劃の『ハーモニー』は英訳されているため、『ブラインドサイト』とのテーマの共通性を指摘する書評や感想もあるそうです。

あらすじ(引用)
突如地球を包囲した65536個の流星の正体は、異星からの探査機だった。調査のため出発した宇宙船に乗り組むのは、吸血鬼、四重人格の言語学者、感覚器官を機械化した生物学者、平和主義者の軍人、そして脳の半分を失った男。彼らは人類の最終局面を目撃する―。

・過去語り(引き継ぎワード)
この本では各章の始まりなどの場面転換の際、主人公シリ・キートンの過去のエピソードが語られる。主人公の、父、母、親友、そして恋人とのやりとり。脳を半分失い共感能力を失った男のコミュニケーションはどうしようもなく上手くいかない。

・テーマ性
前述の通り「意識」がテーマのこの作品。意識が知性にとって障害となるという議論を、哲学から科学まであらゆる視点で総合的に考察していく。また、語り手がくり返し”自分が・・・だと想像してみてくれ”と読者に呼びかけることで”他者に共感することは可能なのか””人は他者を理解することができるのか”という『ブラインドサイト』の主題を強調し、われわれに疑問を投げかけてきます。

・多様(異様?)なキャラクター(たち)
四重人格の言語学者、感覚器官を機械化した生物学者、平和主義者の軍人、これらでも濃いのに、脳の半分を失った男、極めつけには吸血鬼までが登場する。これほどまでに多様な登場人物がいる作品はなかなか無いのではなかろうか?かえって個性のバランスが良く整っているようにも思えてくる。実際読み進めると、吸血鬼の親和性に驚くはず。また、登場人物それぞれの個性と行動が「意識」への議論を補強し無駄になっていません。

『ブラインドサイト』は上・下に分れているのですが、下にまでなんとかたどり着ければ本作で最も面白い部分である、作者の狂ったような参考文献と注釈、テッド・チャン氏の解説が読めるので上と下を同時に購入し、逃げ道を無くしてから読むのをオススメします。
続編の和訳本『エコープラクシア 反響動作』がついに出版されるので、読むなら今かと思われます。
あっそうでした、あけましておめでとうございます。